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    と、房一の近くで云ふ声が聞えた。今泉らしかつた。つづいて同じ声が

    「あ、さうでしたな。一つ診ていたゞきませう」

    もともと口下手ではあつたが、まだ舌がもつれる風で、一口ごとに息をついて云つた。

    房一は永い間診察した。ひどい貧血症、食慾のないこと、動悸が打つ、野良仕事はもう三四ヶ月前からできないでいる、――

    「それあ、いかん。こんなに多くはいらんよ」

    「坑には入つてみたんかね。あすこはもう何年も入つた人がないちふことだが」

    ちょうどその時我々は郵便局の前に出ていました。小さい日本建にほんだての郵便局の前には若楓わかかえでが枝を伸のばしています。その枝に半ば遮さえぎられた、埃ほこりだらけの硝子ガラス窓の中にはずんぐりした小倉服こくらふくの青年が一人、事務を執とっているのが見えました。

    だが、急に機嫌をとり直した。そして、徳次が彼の口から聞くことでどんな表情になるかを期待しながら、ゆつくり相手の顔を見て云つた。

    「まさか!」

    「さうですか。それは――」

    「さうだ。大したことはない」

    「徳さんが、――今、そこに、おかみさんが来てるんですわ」

    と、房一は訊いた。

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